2012/06/30

パーソナルアシスタントの未来

AppleのWWDC、MicrosoftのWindows Phone Summit、GoogleのGoogle I/Oと、ここのところ立て続けにイベントが開催されて、興味深いニュースが沢山出てきました。

順番は前後して、まずMicrosoftからですが、Windows Phone8でカーネルがWindows 8系に刷新されることが発表されました。Windows Phoneではいままでマルチコアがサポートされてなかった為にハードウェアスペック的にはかなり見劣りしたものとなってましたので、これでようやくiOSやAndroidと戦えるものになりました。

MicrosoftがOSカーネルの基本機能で出遅れるというのも何だか意外な感じもしますが、逆にここはいつでもキャッチアップできるからUXの開発を優先したとも言えます。

ただ、後述しますがAppleやGoogleは既に次のフェーズへと戦いの舞台を移しているので、周回遅れを挽回したとまではまだ言いがたい状況です。

Appleは、今回のWWDCの目玉はRetina Macbook Proで、iOSに関しては控えめな発表のように思いました。これはiPhone5の登場に向けてまだ何か隠し玉があるような気がしてますが、どうでしょうか?

影響の大きそうなところと言えば、Mapを従来のGoogle Mapから独自のものに切り替えたことでしょう。GoogleのAndroidとは競争が熾烈になってきているので、コアな機能を他社に握られたままでいることは好ましくない為、ある意味当然と言えば当然の戦略ですが、まだ地図の完成度が低いので正式版に向けてどう仕上げてくるのか楽しみではあります。

独自のMapを強力な武器に仕上げられなかった場合は、逆に足かせとなる可能性もあり、そういう点では諸刃の剣と言えるでしょう。ただ、GoogleはiOS向けにMapアプリを提供し続けるでしょうから、ユーザーとしては実用的な方を単に使えば良いだけなのかも知れません。

Googleは、Jelly Beanで着実にAndroidの完成度を高めました。特に画面遷移の滑らかさやタッチのレスポンスでこれまで遠くiOSに及びませんでしたので、額面通りに改善されたのであれば、Androidもいよいよ死角が無くなってきたのかも知れません。

もとより、OSの機能としてはAndroidの方が上だと個人的には考えており、ICSでUIのデザインもかなり洗練されたと思ってます。iOSは始めの完成度が高かったことから見栄えはほとんど変わっておらず、そのせいもあってか、情報量の少ないホームスクリーンもいまとなっては何だか古臭く感じるくらいです。

しかしAppleやGoogleはOSの機能よりはスマートフォンの今後のあり方や使われ方、特にパーソナルアシスタントとしての機能向上に開発のフェーズを移しているような気がするのです。

というわけで相変わらず前置きが長いですが、ここからが本題です。

パーソナルアシスタントとしての機能は、AppleがSiriで先鞭をつけた感があるのですが、Androidは従来からある音声検索の機能を改善するという手で来ました。AppleのSiriのように特別なネーミングを付けなかったのは、もしかしたらAndroidという名称自体が既にそのような性格を持ち合わせているからなのかも知れません。

Siriや音声検索はユーザーからの能動的な問いかけに対するものですが、パーソナルアシスタントとしてより重要なのは、Google NowのようなユーザーのTPOに応じてスマートフォンが自律的にユーザーに取って有用な、あるいは利便性の高い情報を提供/提案するような機能でしょう。

しかしこのようなパーソナルアシスタントが有効に機能するには、ユーザーのかなり詳細な行動(スケジュールや位置情報など)やプライベートな情報(交友関係や趣味、趣向など)を情報としてインプットしなければならないので、セキュリティがこれまで以上に重要になります。

極私的な情報がいつネットに流出するかも知れないという不安がある中では、誰も安心して使えないですものね。それにこういうユーザーの行動が広告などに二次利用されることへの嫌悪感をどう払拭できるか?というのも大きな課題だと思われます。

本来、行動ターゲッティング広告というものはユーザーに取ってもメリットのあるものであるはずなのですがね。

また要人におかれましては、自分の位置情報がプライバシーの侵害や犯罪に利用される可能性も否定できないので、こういう技術が単に便利だからと、すぐに世の中で受け入れられて使われるようになるまでは、まだまだ時間がかかるものと思われます。

そういう意味では、ユーザーが機能をコントロールできるon{X}のようなものの方が、始めは受け入れられやすいのかも知れません。ただ、一般ユーザーがJavaScriptでコーディングするというのもハードルが高いし、最終的にはGoogle Nowのような検索履歴等から自動で機械学習するようなシステムじゃないと普及しないでしょう。

パーソナルアシスタントの機能が、ユーザーからの膨大なインプットから、ユーザーがもっとも欲するデータを引き出すものであるとすると、ユーザーからの大量のインプットを処理するには、データを格納する器となるデータセンターやクラウドコンピューティングなどのシステムが欠かせません。

Appleは沢山のアクティブユーザーを抱えていることから、インプットに関しては申し分無いと思われるけど、器を作る能力にはやや不安がある。Microsoftはりっぱな器を用意する力はありそうだけども、如何せんインプットが少なそう?

そういう意味ではこの分野は、いまのところGoogleが一番うまくやれそうな気がします。検索市場を独占していることから、Androidユーザー以外からの膨大な検索クエリーのデータもアルゴリズムの改善に活用できることも有利に働くでしょうし、データマイニングも研究者集団たるGoogleの得意とするところのような気がします。

しかし、AppleのUXデザインの巧みさや、短い時間でキャッチアップしてくるMicrosoftの開発力も侮れないので、実際の人間のように三者三様にそれぞれに性格の違うパーソナルアシスタントとして発展して行けば面白いのではないか?と思います。

例えば、Appleのはクールビューティで的確な回答を示すが扱いが少々気難しいところがあるとか、Googleのはほとんどの場面で完璧な答えを出すけど、稀に重要な情報をうっかり外に漏らしてしまうドジっ娘だったりとか、で、Microsoftのは何でも卒なくこなして実用性では一番なんだけど、なぜだか一般受けが悪かったり?とか。

そんな近未来を妄想する今日この頃です。